園だより9月号 巻頭言
<主 題>のびやかに
<聖 句>
 「あるものは百倍にもなった。」
             (マルコによる福音書4章8節)
写真:メダカさんに赤ちゃんが誕生しました。

 暑い夏を元気にうれしく過ごせましたか。年々、夏の暑さが厳しくなってきました。それに加えて、今年も突然の集中豪雨によって各地で水害が生じてしまいました。明らかに、私たち人間が自然環境を破壊してきたために、自然の営みが崩れて異常気象が起こってしまっています。異常気象というより、ここ数年これが当たり前になっているようにも感じます。また、それに加えて今年の夏は、新型コロナウイルスの感染が始まり3年が経過したのになお感染は拡大し、第7波となってしまいました。一日の感染者数が過去最高となる中で、行動制限もない状況で各自が感染に気を付けなくてはならず、それと同時に暑さによる熱中症にも気を配らないといけないという日々でした。子どもたちは、外で遊んだり、外出することの困難な状況の中で夏休みを過ごしてきたのではないでしょうか。幼稚園でも夏休み中、夏の仲良し保育として「教育・保育の提供」をし続けましたが、感染拡大に配慮し1階を合同部屋(さくら・れんげ)にし広いスペースで保育を行い、部屋ではマスクを着用し一日中2台のクーラーとサーキュレーターをフル回転させ、保育内容も小さなプールや水遊びを中心に、日差しを避けつつ気持ち良く過ごせるように努めました。また毎日のように熱中症警戒アラートも発令されたこともあり、子どもたちの体調に気を配りつつ暑い夏の保育を行いました。子どもたちにとって、過ごしにくい環境だと実感する夏となりました。

 私には既に自立している3人の子どもたちがいます。我が家では普段の生活を忙しくしていたので、子どもたちが幼い時には夏休みになると必ず、自然の中に出掛けて遊ぶことを大切にしていました。子どもたちは、朝早くから起きて山では山の、海では海の、川では川の遊びを存分に楽しみ、疲れた体を休めるためにはゆっくり休息し(昼寝)をし、夜には満天の星を眺めつつ、色々な種類の花火を楽しんでいました。今の子どもたちは、造られた自然施設ではなく、本当の自然の中で遊んだ経験がどれだけあるのでしょうか。子どもたちは、遊ぶものがなければ、自分たちで遊びを見つけたり、遊びを作り出していきます。その発想力には驚かされました。自然のルールを守りつつ、自然と戯れて遊んでいたことを今でも思い出します。今の子どもたちは、環境の変化のため安心して野外で、自然の中で十分に遊ぶことができなくなっています。昔は、暑い夏でも、木陰に入れば涼しい風が吹き、過ごしやすかったのですが、今では、全国的にどこへ行っても30度を超える暑さとなり、木陰も涼しくはありません。今は今なりの過ごし方があるのでしょうが、色んな意味で子どもたちにとって、今はかわいそうな環境だと思います。

 さて、2学期を迎えて新たな歩みを始めて行く子どもたちに与えられている9月の聖句は、今をどのように、どんな所で過ごすかで、将来に影響を及ぼすことを伝える言葉となっています。この聖句は、「種蒔きの譬え」と言われる聖書の箇所の一部です。同じ種でも蒔かれた土壌や環境によって、育ちが異なることを伝えています。道端の上、石地の上、茨の中、良い地の上という4つが上げられており、前の3つは、様々な理由で実を結びませんでしたが、良い地に蒔かれた種は、「芽生え、育って実を結び、あるものは三十倍、あるものは六十倍、あるものは百倍にもなった」と聖書に記されています。今、子どもたちの環境をどれだけの人が真剣に考えているのでしょうか。また、考えてきたのでしょう。少子化が叫ばれつつ、親や大人中心の考え方で、子どもたちの育ちを無視した環境整備をし続けてもうどれぐらいになるのでしょう。何ら効果のある手立てが出来ず、今に至りました。子どもと共に歩むことが喜びと楽しみとなる子育て環境の整えができなかった結果でしょう。そんな社会の中で“めぐみ”に集う子どもたちには、様々なことが保証され、元気に明るく伸び伸びと、仲間を思いやり、豊かな心で成長していってほしいと願っています。子どもは世の宝です。そのことをいつも思って過ごしたいものです。夏休みに、昨年から飼い始めたメダカが卵を産み、待ちに待っていた赤ちゃんが誕生しました。これも水替えを含めて、環境が大きく影響していたことを痛感させられました。この赤ちゃんが無事に成長していくことを心より願っています。そのためには、その環境を整えなくてはいけないので、日々勉強です。子どもたちを中心にした“めぐみファミリー”の豊かで健やかな成長を心より祈ります。
< 園 長 >  
著作・製作 学校法人星陵学園 星陵台めぐみ幼稚園
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