園だより5月号 巻頭言
<主 題>こころ満たされる
<聖 句>
 「あなたはわたしのもの。わたしはあなたの名を呼ぶ。」
         (イザヤ書43章1節)
写真:野菜の苗を植えました。実るまでみんなで育てるよ。
 
 何も出来ぬまま、5月を迎えてしまいました。本来ならば、嬉しい春の訪れと共に、それぞれが希望と喜びに満ちて新しい歩みを始めているはずでした。しかし、実際には何とか年長組の始園式と各学年のクラス発表だけを終えることが出来たという状態です。新型コロナウイルスの影響は、わたしたち人間の甘い考え、思いをはるかに越えて、世界中に大きな影響を与え続けています。世界各地が混乱状態に陥り、大切な医療が崩壊状態になり、助けられる命さえ、助けることの出来ない状況が続いています。人間の弱さ、限界、愚かさを知らされる時となっています。どんなに人間が進歩を続けて、知恵に満ち、医学や科学によって最先端のものを提供しても、対抗出来ないのです。人間の傲慢で浅はかな自己中心的な歩みが根本から問われています。人間の知恵や力によって自然や環境を思いのまま平気で壊し続けてきた歩みも、たった一つの新しいウイルスの前では成す術を持ちません。感染の恐ろしさを謙虚に受け止めずに歩んできた人間の姿が、多くの命を奪われる結果をもたらしてしまいました。そのことを謙虚に受け取り、わたしたちの“今”出来ることに思いを向けて、目の前のことを自分のことだけでなく、他者のことも考えながら、行動して行くしかないのです。人間の命を保つためには、互いが思いやり、助け合っていくことが一番大切です。これ以上感染が拡大せずに、悲しい・苦しい現実が少しでも減ることを願いつつ、一日も早くみんなが安心して笑顔で過ごせる平穏な日々が与えられることを心より祈っています。

 いつ、どのように幼稚園の歩みが行えるのかは、今の段階では分かりません。しかし、少しでも子どもたちにとってより良い環境が提供出来ることを願いつつ、新しい一年の歩みを計画して行きたいと思います。もう既に1カ月以上も始まりが遅れている状況の中では、例年通りの歩みが行えないことは明らかです。だからこそ、これから与えられる日々を大切に過ごしていくことが求められます。“めぐみ”の保育は、キリスト教に根差したものとして、子ども一人ひとりが、神によっていのちを与えられた者として、神の愛と恵みに満たされて、今の時をいきいきと喜びと感謝に満たされて歩めることを祈り、願いつつなされます。幼稚園に来ることの中で、子どもたちが様々な出会いと交わり、経験を通して、生かされている喜びに触れ、喜びに満たされることを味わうことが出来るように、“めぐみ”での限られた許される子どもたちとの生活を最大限に満喫して歩みたいと思います。この一年が、子どもたちにとって、保護者の方々にとって、教職員にとって、喜びと感謝の日々となりますことを心より祈ります。「みんなが笑顔で過ごせる世界を創り出す。」ことに心を寄せて、皆さんと共に子どもを中心に一年の歩みが一日でも早く始められることを願っています。

 さて、今は、誰もがどこにも出掛けられず、十分な事が行えず、感染の恐怖と命の危機を感じながら過ごさなければいけない時を過ごしています。世界中の人が混沌とした、混迷の中にあります。家族のことを、周りの人の事を思いつつ、それぞれの行動を考える時が与えられています。自分だけの我が儘な自己中心的な歩みは、自分の、他者の命を滅ぼします。今、他者の命を助けるために感染の恐怖の中、自らを犠牲にしつつ歩んでいる医療従事者や介護等に携わる方々の行為を無にするようなことをしないように、その営みのことにも心を向けて歩めるものでありたいと思います。日本の感染への取り組みの遅れは、外交政策(中国)、オリンピック開催、経済等を優先して、感染拡大を軽んじたことにあり、多くの命を犠牲にしてしまいました。今は、これ以上悲しみが広がらないように、わたしたちが自分のすべきことに心を向けるしかありません。神戸市は5月31日まで休校措置を延長しました。
今の状況では仕方がないことでしょう。しかし、子どもたちに、またその家族に我慢をさせるならば、大人も必要最低限の行動とし、周りに配慮して過ごさないといけないのではないでしょうか。そうでない限り、この状況は収まりません。神から与えられた大切なそれぞれの命の営みが、愛と喜びに満たされて過ごせることを心より願っています。

 5月の聖句は「あなたはわたしのもの。わたしはあなたの名を呼ぶ。」ですが、神の思いから逸れ、背き歩んできた者に対しての救いを与えてくださる言葉です。滅び去ろうとする現実の中で、神がそれぞれを「わたしのもの」としてくださり、一人ひとりの名を呼んでくださるのです。わたしたちは、神から命を与えられた者として、神の愛と恵みをしっかりと受け取り、希望を失う事なく、それぞれの与えられた役割を果たして過ごすことが大切なのです。この様な状況にあっても新しい一年の歩みはもう始まっています。今の時まで、守られて、豊かな命の営みの中にあることに感謝しつつ、周りにいる人と共に過ごせる今の時を大事に歩み、元気に笑顔で幼稚園にて共に歩める日を待ち望みましょう。
< 園 長 >  
著作・製作 学校法人星陵学園 星陵台めぐみ幼稚園
無断複写・転用・転記はできません。